2020.08.19
梅岡祐介
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  • 天満・天神橋筋・南森町

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旅めがねの取材と記事を書くこと、学生たちと一緒に少しずつ進めています。人の"自然と足が向く"姿を見るのが好き。そんな場所をつくったり、関わったりしていたい。誕生日辞典に「57歳で旅人になる」と書いてあったので、そろそろ旅について考えはじめた2020年、40歳、厄年のど真ん中です。

大阪、大人の社会見学!造幣局本局でお金の話

毎年春の「桜の通り抜け」で有名な造幣局本局へ!お金が生まれるところを見せてもらいました

↑写真は造幣局広報担当の福井さん。コロナの影響で現在工場見学も休止中のところ、特別に案内してくださいました!
今回取材に伺ったのは、天満にある造幣局本局。毎年春に開催される「桜の通り抜け」でご存知の方も多いのではないでしょうか?。開催期間中は大川を挟んで天満橋を渡った向こう岸、京阪天満橋駅のあたりまでずらりと行列ができるほどの人気で、聞いてみるとなんと毎年50万人から、多いときで100万人もの人が1週間の開催期間に訪れるそう!

そんな造幣局は、名前の通り貨幣をつくっている場所なのですが、普段私たちが使っている100円玉や500円玉の硬貨が、ここ大阪天満の造幣局でつくられているってご存知でしたか?キャッシュレス化が進む世の中ですが、まだまだ馴染みの深い貨幣、お金の生まれる場所を取材してきました。(2020年7月20日取材)
¥ お金をつくっているだけじゃない!?造幣局がしていること
お金が今のように流通しはじめたのって・・・、とイメージするとなんとなく想像がつくかも知れませんが、造幣局は明治初期に誕生しています。幕末に外貨の流入などで乱れた貨幣制度を立て直すために、明治新政府が設立したのだとか。創業は1871年(明治4年)4月4日、ということでなんと来年、2021年にちょうど150周年を迎えるそうですよ!
↑創業当時の造幣局絵図
しかしなぜ大阪に?と思って広報担当福井さんに聞いてみると、「一番の理由は水利ですね。それと大川(旧淀川)のこの辺りに広大な土地があったのも大きいと思います。当時大阪遷都論があったとか、江戸の治安が悪かったからという話もありますが、何が決め手となったかは定かではありません」とのこと。香港から大きな機械を船で運び込んできたそうですから、大阪湾から運びやすかったんでしょうね。

さて、そんな歴史ある造幣局、実はお金をつくっているだけではありません。

ざっと造幣局が行っている事業を書き出すと、
◉ 貨幣の製造
◉ 勲章・褒章、金属工芸品の製造
◉ 貴金属製品の品位証明、地金・鉱物の分析
など。

勲章・褒章、というとなかなか普段馴染みがないかも知れませんが、国家または公共に対し功労のある方や各分野において優れた行いのある方に国から授与されるもので、たとえば「文化勲章」だと2019年にノーベル賞を受賞された吉野彰さんや、少し前に芸術家の草間彌生さん、建築家の安藤忠雄さんや、俳優の高倉健さんなども受章されています。「褒章」の方はもう少し身近で、人命救助に尽力した方に授与される紅綬褒章や、公共事務に尽力した方に授与される藍綬褒章など、身近な方でも受章された方がいらっしゃるのではないでしょうか?

今回、写真に撮ることはできませんでしたが、博物館でその勲章の最高位にあたる「大勲位菊花章頸飾」というのも見せてもらいました。これは天皇陛下や外国元首が受章されているほかは伊藤博文さんや吉田茂さんなど、歴史の教科書にも出てくるレベルの方くらいしか受章されることはないようですね。。。
↑せっかくなので、造幣局のパンフレットに掲載されている写真でご紹介。「大勲位菊花章頸飾」は左下の黒背景の写真です。
もう少し馴染み深いものだと、オリンピックのメダルや国民栄誉賞などの金属工芸品もつくっているそうですよ!

また、造幣局では貴金属製品の品位証明という業務も行っています。金や銀、白金(プラチナ)などの純度を調べる試験を実施し、合格したものにはその品位を証明するマークを打刻しています。
↑こちらもパンフレットより。右下写真の指輪に刻まれているのが品位証明となる、通称「ホール・マーク」
このように、貨幣製造だけでなく貴金属製品に関わる様々な事業を行っている造幣局。現在はさいたま市と広島市に支局があり、さいたま支局では一部勲章の製造や貴金属の品位証明を、広島支局では通常貨幣と卑金属の記念貨幣(金貨や銀貨以外)の製造を受け持つなど、三局体制で取り組んでいるそう。これで少し造幣局について詳しくなりましたね!
¥ アナタは何問答えられるか!?お金にまつわるQ&A!
さぁ、造幣局の事業について詳しくなった皆さんに、つづいて気になるお金の話。広報担当福井さんから教えてもらったこと、三択クイズ形式でご紹介していきましょう。

では早速第1問!
Q.貨幣の製造量は誰が決めているの?
──────────
1.日本銀行
2.財務省
3.半沢直樹
──────────
さぁさぁ、いかがでしょうか?これは・・・明らかに違う選択肢が一つありますね。半沢直樹は確かに毎週見てますけど、んなわけないじゃないですか、ね。そして若干このクイズ形式になってから文体が乱れていくこと、お許しくださいね。さぁ、しかし1番と2番は迷うところじゃないですか?

ジャカジャカジャカジャカジャン!答えは!
A.「2.財務省」
でした!

どうやら毎年4月1日に「今年度の貨幣製造計画」というのを財務省が発表しているんですって。それで財務省と造幣局の間で契約が交わされ、はじめてその年度の貨幣製造がスタートするのだそうです。

>>>令和2年度貨幣製造計画|財務省ホームページより

貨幣の製造量はその年によって変動します。ここ数年は年間10億枚前後の製造で大きな変動はありませんが、たとえば消費税増税のタイミングなど、小額の貨幣がたくさん使われることが予想される時には製造枚数も増えるとのこと。高度経済成長期などはお金の流通量もものすごく多かったので、現在の5倍以上、年間56億枚もつくった年があったそうです。「今は逆にキャッシュレス化が推進されていることもあって、製造枚数は減っていくかも知れません」と福井さん談。そうなると造幣局の事業内容もまた変わっていくのかも知れません。
↑工場見学で見せてもらった社会情勢と貨幣製造枚数の推移グラフ
さてさてどんどんいきましょう、第2問!
Q.「地方自治法施行60周年記念貨幣」にて、実在の人物で初めて貨幣に刻印されたのは?
──────────
1.坂本龍馬
2.昭和天皇
3.半沢直樹
──────────
さぁさぁ、いやはや一つしつこい選択肢がありますね!半沢もうええっちゅうねん!これももはや二択になりましたが、いかがでしょうか?ではでは・・・

ジャカジャカジャカジャカジャン!答えは!
A.「1.坂本龍馬」
でした!
↑こちらも工場見学で見せてもらった記念貨幣のイメージ
さすが坂本龍馬さん!という思いもありますが、一方で地方自治法は戦後、日本国憲法施行に合わせて施行されたということですから、またそして記念すべき初の刻印人物ということですから、昭和天皇でしょ!という風にも考えられるはず。しかし残念!「天皇は肖像権の問題と、また一般の人が汚れた手で天皇のお顔が刻印されたお金を触ることがNGとされ、刻印されたことはないんです」と再び福井さん談。うーむ、確かに納得できるような。しかし龍馬さんはええんかい!とも思います。
さぁ早いもので最終問題です!第3問!
Q.1年間で約10億枚の貨幣(額面金額にして約1118億円)を製造するのにかかるコストは?
──────────
1.1億円(ボロ儲け)
2.2000億円(大赤字)
3.非公開
──────────
ようやく半沢直樹さんが選択肢から消えました。さぁこれはいかがでしょうか?実はこの質問、一緒に取材同行した大阪ビジネスカレッジ専門学校マスコミ学科の学生たち(OSAKA旅めがね第3期生)から、事前の授業で出てきた質問なんです。確かに気になる!となって、実際に取材時、質問してみました。すると・・・

ジャカジャカジャカジャカジャン!答えは!
A.「3.非公開」
でした!

これは、「あ、そうなんだ」と思いましたね。ま、確かに、お金をつくるのにかかるお金というのも変な話で、上の選択肢のようにボロ儲けでも事業的になんだか良くない気がしますし、逆に大赤字であっても結局お金は増えるのでなんら問題ないような、不思議な感覚です。ここは福井さんもきっぱりと「費用に関しては一切公表していないんです」と答えられました。「まぁ、造幣局のホームページで公表している財務諸表などのデータから推測してみてください」と、補足談もありましたが。

さていかがでしたでしょうか?お金クイズ!お楽しみいただけましたでしょうか?それではいよいよ、工場見学に潜入です!
¥ 工場見学&造幣博物館へGO!
ここからは写真を中心に、造幣局の様子を楽しんでもらいたいと思います。

造幣局の貨幣製造工場は広く、4階建てになっています。
現在、コロナの影響で工場見学は休止中とのことですが、一般向けの再開のために準備を進めておられます。1階から工場に入り、まず案内してもらった2階の観覧廊下には、ソーシャルディスタンスを保って見学ができるように、足元に待機場所マークが貼られていたりしました。

さすがにつくられているのがお金とあって、工場作業場内への入場は金属探知機の通過などセキュリティがとても厳しく、通常は造幣局職員でも滅多に入れないとのこと。ただし観覧廊下には随所にモニターが設置してあって、各製造過程の様子が見られるようになっていました。
  • ↑溶かして延ばされた金属が広島工場から運ばれてきて、それを貨幣の形に丸くくり抜いたら、模様を打刻する前にきれいに洗浄されます。
  • ↑500円玉のプレス工程。表裏の刻印と、周囲の斜めギザを一度に打刻するのはとても難しい技術とのことですが、それをなんと1分間に750枚もプレスしているといいます。
  • ↑プレスが完了したら、模様がきちんと打刻されているかどうか、自動でガンガン検査されます。一部目視での確認を行う人もいらっしゃいました。
最上階、4階ではロボットによる自動封入封緘作業が行われていました。今の工場は平成12年に建てられたようで、全体的にまだ新しいなという印象でしたが、以降徐々に機械化が進んでいるのだとか。袋詰めにされた貨幣を運搬するリフトもロボットの自動運転でした。
↑左写真(スマホだと上写真)が「さくらちゃん」右写真(スマホだと下写真)が「コインくん」と、リフトにも名前がついていました。
そのまま流れで案内していただいた造幣博物館では、貨幣の歴史から、様々な記念貨幣の展示がされていました。
ちなみにぼくがテンション上がったのは「スターウォーズ」の記念貨幣!これはちょっと集めたくなるかも。それにしても綺麗に色つきで刻印されています。
と、これにて大人の社会見学、造幣局編はおしまい、おしまい。工場見学はまだしばらく休止中ですが、博物館見学は6月22日から再開しています。入館料は無料。少人数なら特に予約の必要もなく、造幣局正門詰所にて見学手続きをするだけで入館可能です。ぜひ皆さんも貨幣の歴史に触れ、お気に入りの記念貨幣を見つけてみてください!

さて、最後におまけのクイズ!工場見学途中の雑談で教えていただいた話。実はお店で買い物などする時、一度に使える貨幣の枚数に制限があるってご存知ですか?
ではおまけ問題!
Q.一度に使える貨幣の枚数は、1貨幣につき何枚まででしょうか?
──────────
1. 10枚
2. 20枚
3. 30枚
──────────
これはなかなかどれもリアルな選択肢でしょう?さぁ、いかがでしょうか!
ジャカジャカジャカジャカジャン!答えは!
A.「2. 20枚」
でした!

こんなことは私、40年間生きてきて初めて知りました。留学生の多い地域などでは、知らずに大量の硬貨を出してしまう学生も多いらしく、店によっては「1貨幣につき20枚まで」などと掲示されていることもあるそう。なので日本人よりもかえって留学生の方がこのことを知っているらしいですね。

最後までお読みいただきありがとうございました!

PICK UP!

2021年度、新500円玉が登場!

なんと来年、2021年度上期を目途に、新しい500円玉が発行されるようです。「バイカラー・クラッド貨幣」といって、外側の材質と内側の材質が違う2種類の金属でつくられる貨幣。(写真は令和元年に発行された「天皇陛下御即位記念貨幣」この記念貨幣のような感じで内側と外側の色が違います)しかも「異形斜めギザ」という、現在の斜めギザよりもさらに難しい技術で刻印されるというハイレベルな貨幣になるそうです。一般に流通するのは少し先になりますが、楽しみです!
>>>新しい500円貨幣について|財務省ホームページより