2020.08.13
梅岡祐介
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  • 梅田・北新地

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旅めがねの取材と記事を書くこと、学生たちと一緒に少しずつ進めています。人の"自然と足が向く"姿を見るのが好き。そんな場所をつくったり、関わったりしていたい。誕生日辞典に「57歳で旅人になる」と書いてあったので、そろそろ旅について考えはじめた2020年、40歳、厄年のど真ん中です。

中津に新しく誕生した「ハイパー縁側」とは!?

自然と人が集まり、つながりが出来ていく “次世代の縁側”から生まれる偶発的な出会い

↑写真は今回インタビューに応えてくださった久米さん(左)と取材者、梅岡(右)「ハイパー縁側」の横断幕前で記念撮影
「ハイパー縁側」って何?どこにそんな縁側があるのん?ハイパーって何がハイパーなん?と疑問だらけでスタートした今回の取材。梅田のすぐ北、中津のビルの一角に誕生した、なんだか面白そうな場所(?)「ハイパー縁側」の企画運営に携わる中心人物、久米昌彦さんに話を聞きに、現地へ足を運びました!(2020年7月22日取材)
「ハイパー縁側」は場所じゃなくてイベント名称!?
久米さんに話を聞く前に「ハイパー縁側」のオフィシャルサイトを見ていると、どうやらビル脇の半地下屋外スペースで、いろんなゲストを呼んでトークイベントが行われているようでした。
「縁側」といえば日本家屋独特の、部屋から外に張り出してつくられた、家の中でもあり外でもあるような“曖昧な”場所。占有地とパブリックスペースの中間で、内と外を緩やかにつなぐ印象があります。

「縁側でお茶飲みながら隣のお父ちゃんと喋ってたら、近所のお母ちゃん連中がお菓子もって遊びにきて、気づいたら一緒に喋ってた」みたいに見えなくもないこのトークイベントの様子、この風景が「ハイパー縁側」なのだと、久米さんは教えてくれました。

東邦レオという、なんばパークスや大阪ステーションシティなどの屋上緑化を手がける企業に所属している久米さんは、オープンスペースの活用やまちづくりにも取り組む中で、中津のこの場所、西田ビル(西田工業)で新しくできることを考えていたと言います。

「元々“場所をつくって賑わいを創出する”というようなことは考えていたんですが、ここは誰でもフラっと入ってきて休憩できるような場所にしたかった。けれどいきなりみんなが自由に使うわけでもなく、何かきっかけをつくりたいなと思ってはじめたのが『ハイパー縁側』なんです」

縁側のような風景をイメージして、また既存の空間の使い方をハイパー=超越するといった意味も込めて、「怒られてもええわ笑、くらいのことをやろうと思って」はじめたのだとか。

2019年末、はじめた当初は週1回程度、毎週金曜の夕方に開催といったペースで行っていたイベントも、ゲストがゲストを呼んで金曜、水曜、月曜と回数も増え、今では週3回くらい「ハイパー縁側」が開かれているそう。

トークイベントだけでなく、音楽の演奏や手話のパフォーマンスなど、登壇するゲストに合わせてさまざまな形があるようです。
「狙いはない」!? テーマは“偶発的な出会い”
既に50人近くのゲストが登壇しているという「ハイパー縁側」。「ゲストがゲストを呼んで・・・」とは言うものの、誰でもいいってことはないでしょう?と、その人選やコンセプトについて聞いてみました。
「コンセプトは、たとえばこれからまちが抱える社会課題だとか、どうやったらまちが面白くなるか?みたいなことは頭の中にあったりしますが、それよりもゲストの方とディスカッションしていく中で何か生まれる、といったイメージの方が強いです。私自身はゲストの方を選ぶときに全くフィルターをかけない。自然とゲストの方が新しく紹介してくださった方だとか、登壇されてお話するときにほぼ初対面ということが多いんです。」

ここにも「縁側」らしい、敢えて“曖昧に”してあるようなスタンスがうかがえて、とても納得しつつ、それにしてもしかし「こんな風になっていったらいいな」という様なイメージとか、目的はないんですか?と、聞いているこちらが不安になるような感じがして、ついつい突っ込んで聞いてしまいました。

「ハイパー縁側自体に狙いはないんです。ただ人と人の出会う場になれば、と。“偶発的な出会い”をテーマにしていて、偶発性とか偶然性を意識しているから、トークの時にも事前に情報を入れ過ぎない。無料で開いていて誰でも参加できるし、ローカリティというのもテーマの中にあったりするので、わざわざ有名人に登壇してもらうのではなくて、街の飲食店の方だとか、地域で活動するボランティアの方などにもお話ししてもらっています。」

そんな風に、自然とつながった人たちにゲストとして登壇してもらいながら、「その人たちの魅力に迫る」ことを意識していると、久米さんは話してくれました。まさに家の縁側に腰かけて近所の人と話しているような感覚で、「話すことがきっかけで何か生まれればいいし、ゲストの方の何か次のアクションに繋がればいい」のだと。

自然に人と人の出会うことが先にあって、その中に共通する思いやポリシーが見つかれば、何かしら生まれるかも知れない。もしかしたらそんな偶然が生まれやすいのも、“自分のものでもあり、あなたのものでもある”ような「縁側」という場ならではのことなのかも知れません。久米さんの話を聞いていて、「ハイパー縁側」の在り方をそんな風にイメージしました。
知ってました?大阪ルール「アカンて言われるまでやってええ!」
さて、偶然性を大切にしながら場づくりやつながりづくりに取り組む久米さんですが、「ハイパー縁側」を通じて出会った“まちの先輩方”から「もっともっと遊べ!」と言われるそう。

大阪という街のイメージについて聞いたときに、「大阪ルールで『アカンて言われるまでやってええ!』というのがあることを、まちの人から教えてもらいました」と、中津で刺激され、よりいろんなことをしていきたいと考えるようになったことを、話して聞かせてくれました。

今新しく取り組んでおられるのは、なんとクラフトビールづくり。「ハイパー縁側」の駐車場スペースをブリュワリーに改造して、今年秋頃の完成を目指しているそう。
「中津の『一般社団法人うめらく』さんという団体と一緒になって、ホップを育てるところからはじめています。みんなで育てて、ビールつくって乾杯しよう!って」。

これまでも「ハイパー縁側」のイベントでワインを並べるなど、飲んだり食べたりしながら楽しめる時間があったようですが、ブリュワリーができて、その場でつくりたてのビールが飲めるようになると、より楽しそうです。
↑過去「ハイパー縁側」での飲食の様子
偶然が偶然を呼びながら新しい人が関わっていくごとに、どんどん形を変えていきそうな「ハイパー縁側」のこれからが楽しみです。

そしてこんな風に「縁側」を捉えた“次世代の縁側”が、いろんなところで見かけられるようになると、まちがより楽しくなりそうです。
おまけ:縁側でジャケ写
取材に同行した大阪ビジネスカレッジ専門学校マスコミ学科の学生チームに、この洒落た縁側に座ってもらってアーティストジャケ写風の写真を撮りましたので、記念に掲載しておきますね。